
Westfarlen Stadion in Germany
ドルトムンドの街には朝早くからユニフォーム姿の人々が溢れていた。駅の中心から歩いて30分と案内されたツーリスト・インフォメーションでまだチケットがスタジアムで買えると聞いて、まだ時間があるにせよ、スタジアムへと足を向けた。
思ったよりも近代的な建物が並ぶ街並みではあるが、それほど大きな街ではなく、街の観光としては観る所はないに等しいほどなのではないだろうか。しかし、この街には誇れるサッカーチームがある。街のあちらこちらに見かけられる黄色と黒で彩られた旗がこの街の熱気を伝えてくれる。
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偉観を誇るウエストファーレンスタジアム
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Uバーンが整備されていて、実際は30分もかからずに行くことのできるスタジアムは街の南側にある。外からの眺めは決してかっこいいものではないのだが、一歩その中に足を踏み入れるとスタジアムの隅々から観客への配慮が伺える。どの位置からもピッチ全体が見渡せるメイン、バックスタンド。一度は上ってみたくなるような驚くほどの高さを誇るゴール裏も決してピッチを遠く感じさせない。完成度の高さは指折りのスタジアムである。
チケットはその脇にあるファンショップで買う事ができた。こじんまりとした建物からは小さな行列が溢れて、当日にも関わらずチケットを求めて集まる人々の、のんびりとした雰囲気は、なにかホッとする気持ちにさせてくれる。そして10分ほど並んで待つことで幸運にも定価37ユーロのチケット
を入手することができた。今回はまさしく幸運だったと思う。余りが出ているとも思っていなかったし、実際、スタジアムへ向かうまでもチケットの余りを高い値段で売りつけようとする人たちにも出会った。情報を知っておくことができたからこそ正規のチケットを購入できた訳である。
昼過ぎのドルトムンドの街にもユニフォーム姿に太陽の下で美味しそうにビールを飲む人々の姿が溢れていた。ミラノからも多くのサポーターが駆けつけているらしく、赤と黒の彩りもまた街並みに花を添える。ヨーロッパでの通貨の統合は両国間の隔たりを少なくしているようにも思える。
そして、いよいよ日の暮れかけたころに再びウェストファーレンスタジアムへ。
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BVBファンには阪神タイガースファンと響きあう何かがある。
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スタジアムの周りでは、人々の流れが切れることなく押し寄せてくる。
この国でのステータスはいかに多くのマフラーを身につけているかのようだ。腰から下にまきつけられた驚くほどの数のマフラー。ジャケットに張りつけられたワッペンの数々。それら全てがこれまで見てきたという歴史でもある。ヨーロッパ各国の中でも一種独特のスタイルを持っているようにも思える。
人々の流れに乗ってスタジアムに入り席につくと、スタジアムの素晴らしさと、雰囲気と熱気にほだされてこちらも気持ちが昂揚してくる…。その高まりは選手がスタジアムに登場して来た所で大きく膨れ上がる。これからどんな試合を見せてくれるのか。その期待感は、はじめてスタジアムを訪れたものだけでなく、古くからサポートしつづける人々からも感じ取れる。情熱は伝染する。
大歓声に包まれた試合はスモールフィールドでの攻防で幕をあける。キーパーに戻したバックパスのボールにさえオフサイドトラップをかけようとするミランのディフェンスラインにミランの目指すサッカーのレベルの高さが伺えたのだが…。
しかし、怪我から戻ってきたマルディーニだけではドルトムンドを止める事はできなかった。コスタクルタを怪我で欠いた状態ではディフェンスの連携は遅れ、高さと早さを兼ねそろえたドルトムンドの攻撃に翻弄される。
1点目のボールがサイドから上がった時にドルトムンドの選手は4人がペナルティ・エリアの中にいた。ミランのディフェンスは自分のマークする相手すら捕まえられずに結局PKを与えてしまう。アモローゾが冷静に決めて先制点となった。
まずは同点に追いつきたいミランは、中盤でのプレスを更に厳しいものとし、前線からボールを奪おうと試みるが、今だ連携が上手く行っていない点と、ドルトムンドの早いボール捌きからボールをいいい形で奪うことができない。得点こそ決められなかったものの、ロシツキの素晴らしい持ち出しからのワンツーにも完全にスペースを与えてしまっていた。
完全に試合をドルトムンドが支配してしまうと、最後はフィニッシュをアモローゾが決めるだけである。サイドからのボールをトラップすると狭いスペースで見事な技術を披露してディフェンスをかわすと、後はゴールに蹴り込むだけだった。
2-0。客席も落ち着いた雰囲気となり、楽観的な雰囲気が漂い始めると、デデも2人を頭越しにかわすプレーを披露し、選手ともども余裕が出始める。
一方のミランはこの日は若いピルロに攻撃を任していたのが裏目に出たらしい。落ち着いて繋がなければならないところでのミスパスや飛び出しで、中盤もバランスが崩れ、攻撃の組み立てができなくなる。前半のこの時点で落ち着かせることの出来るプレイ、例えばルイ・コスタのようなプレイを求めていたはずなのだが…。
前半のうちに一点を奪い返すことで望みを繋ぎたかった。そして、踏みとどまらなければならなかったところでミランは決定的な3点目を失う。
デデとロシツキの間で教科書通りのワン・ツーが行われると、ミランのディフェンスラインはその侵入を阻むことはできず、深々と切り裂いた右サイドからのセンターリングに飛び込むのを観衆は知っていた。前半のうちに達成されたアモローゾのハットトリックはスタジアムを歓喜の渦に巻き込み、同時にミランの戦意を喪失させるには充分だった。
後半に入ってもドウルトムンドの勢いが失われることは無く、ミランの執拗なオフサイドトラップの網をかき分けて左サイドを駆け抜けたデデのシュートがキーパーの股の下を抜き、無人のゴールマウスの前に転がり出ると、ディフェンスより集中し、走り込んだのがハインリッヒだった。
更に追加点を奪ったスタジアムでは勝利を確信し、喜びに溢れたゴール裏からウェーブが巻き起こる。1周、2周。歓喜はその波に乗り、スタジアムを駆け抜ける。3周、4周。しかし、過度の歓喜は試合から緊張感を奪う。スタジアムの雰囲気を盛り上げるのには一役買うが、観客の目がウェーブに釘づけになる様では…。この試合で最も試合が無視された状況だったかもしれない。
ロスタイムにミランに副審から与えられたセルジーニョの飛び出しはゴールの右を抜け、0−4という圧倒的なスコアで敗退し、失意のままにミラノに戻ることになった。試合後のアンチェロッティが語ったように、今のミランは相手がというよりも自らのチームの再構築を早急に進めなければならない。高度な戦術をとり入れようとしている。"黄金期"のミランの姿を取り戻すためには、まだ時間が必要である。
そして、チャンピオンズリーグで敗退しながらも、決勝戦への切符をほぼ手中としたドルトムンド。的確なショートパスと変幻自在なポジションチェンジから作り上げられる攻撃は見るものを魅了する。攻撃にかけるドイツ人プレイヤーの数は少ないが、その戦いはドイツの地に確実に染み込んでいく。ドイツサッカーの復興は近いのかもしれない。
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4月4日、ウエストファーレンスタジアムのパノラマ風景
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